009 芋虫とパプリカのリゾット詰め煮込み


「夕顔を蛾の飛びめぐる薄暮かな」(杉田久女)
「ある晴れた夏の宵、夕顔畑の白い花を飛び交う蛾を目にしたら、それは夕顔別当(エビガラスズメの別名)に違いありません。満天の星空から舞い降りた天蛾たちが、朱縞の腰巻もあでやかに、長い舌をシュルリと伸ばし、花蜜の宴に興じています。なんと雅な光景を、この句は連想させることでしょう。」
昨年、昆虫料理を某月刊誌に連載した。上記は料理紹介の冒頭である。料理名は芋虫とあるが、エビガラスズメを使っている。本種の幼虫はこの時期割合よく見かける。
成虫は翅の開張90〜100mm、飛翔力が強く、ほぼ全世界に分布。腹部に白と黒で縁取られた赤い縞があり、エビを連想させることからこの名がある。口吻は100mmと長く、夕暮時にユウガオなどの花蜜を求めて飛び、受粉媒介をする。いっぽう幼虫はサツマイモなどヒルガオ科植物の食葉性害虫。終齢の5齢で体長80mm前後。体色は4齢までほぼ全て緑色型だが、終齢で緑色型、褐色型、中間型と多彩に分化。年2化(5〜6月、7〜9月)、蛹で越冬。
料理はパプリカに米を詰めて煮てリゾットを作り、高温の油でサクッと揚げたエビガラスズメをその上にトッピングしている。このメニューはちょうどクリスマスに合わせて作ったので、以下のようにしめくくった。
「寒い季節の到来です。あったかい煮込み料理が一番ですね。真っ赤なパプリカに黄色いターメリックライスを詰めて煮込み、からっと揚げた栄養満点の太っちょ芋虫二頭を大胆にトッピング。サツマイモとユウガオ(かんぴょう)も材料に加えているのがミソ。
 クリスマスカラーの芋虫料理は、新たな刺激を舌に求めるカップルにとっても最適のデートメニューです。ジングルベルの鈴の音を聞きながら、揚げたてのサックリした食感をお楽しみください。恋の花蜜の甘さもひときわ高まること請け合いです。」
これからも機会をみて、昨年連載したメニューを紹介していきたい。
以下の三頭は同じエビガラスズメだ。体色の違いがおわかりだと思う。

本日の仕入れ

【エビガラスズメ幼虫】3頭
朝、出勤途中、多摩川沿いの舗道にて、道路横断中を採取。
【エンマコオロギ】5頭
今朝、家庭菜園にて採取。名前に似ずコロコロリーと美声を響かせている。

008 カイコさなぎの佃煮


カイコは絹を生産する家畜として飼育されてきた。我が故郷信州でもかつては養蚕がさかんで、幼少のころ桑畑はそれこそどこにでも見られた。諏訪湖周辺に製糸工場があり、そこで糸がとられる。残ったさなぎを業者が買い付けて県内各地を売り歩くのである。
こうして我が家の食卓にもさなぎが登場する。高価な肉や魚のかわりに安価で購入できる貴重な栄養源であった。甘辛く煮付けてご飯のおかずにした。いわゆる佃煮である。したがってカイコさなぎの佃煮は私にとって懐かしい故郷の味といっていい。
カイコさなぎには独特の臭みがある。食草であるクワの葉の凝縮した臭いだろうか。今回は最初に煮立った汁をすて、もう一度煮て味をつけることにした。砂糖3に対して酒2、みりん2、醤油2の比率で煮詰める。最後にみりんで甘さを調整する。
さなぎ3個で鶏卵1個分の栄養があるといわれている。天然のサプリメントである。中国の薬書によると、「炒って粉にし、蜜でねって丸薬とし、毎夜一丸ずつ飲めば、10人の女を御すことができる」とある。どなたか差し障りがなければ試して成果をご報告願いたい。

007 83頭のカブトの赤ちゃん


先に難攻不落と書いたカブトムシ幼虫だ。我が家ではカブトムシの累代飼育をしている。なんらかの戦法が思い浮かんでも身近にいなければ攻めることができない。
カブトムシ幼虫は一見美味しそうではないか。しかしなにを食べるかを知れば味の想像はつく。腐葉土の味と香りである。これはいささか強烈で虫体の細胞の隅々に拡がっていて、煮ても焼いても消えない。
ところで今年はあまり幼虫が生まれていないのではないかと危惧していた。それというのも、飼育ケースで羽化した成虫のほとんどがオスでしかも非常に小粒だった。今年は新たな個体も入れなかった。
ところがである。飼育ケースの腐葉土を取り去ると、2齢、3齢合わせて83頭を数えた。これだけいれば戦いの相手に不足はない。来春にかけてじっくり作戦を練ることにしよう。

006 bugsjelly


虫をトッピングしたゼリー。ご安心あれ、虫は本物ではない。知人が先日「こんなのあったからおみやげ」と皮肉っぽく笑って渡してくれた。
こういう趣向はアメリカ的だが、裏側を見るとこれがなんと中国製なのに驚く。昆虫料理のメッカだというのに。香港あたりでちょっと変わったお土産として売れていたりするのだろうか。
ちなみに、これを持ってきた知人から以前にエビの姿焼き煎餅をもらったことがある。そのときお返しに虫の姿焼き煎餅を作ると約束したのだが、依然果たせないままでいる。あのエビ煎餅のサクッとした歯触りはなかなか出せない。虫煎餅作りは見果てぬ夢である。