118 『ダーウィンの悪夢』を見る


 半世紀ほど前、アフリカのヴィクトリア湖に、肉食大型外来魚ナイルパーチが誰かの気まぐれで放たれた。そこから悪夢のグローバリゼーションが始まる。ナイルパーチは在来種を駆逐してどんどん増え、その魚の加工と輸出で地元は潤う。だがその裏で弱者の貧困、売春、エイズ、ストリートチルドレン、ドラッグ、湖の環境悪化など、悲惨な状況を呈するに至る。さらにはナイルパーチを積みにやってくる飛行機が、アフリカの紛争に使われる武器を運んでくるという疑惑まで浮上する。
 ザウパー監督は「東京のスーパーマーケットにあるバナナや魚や肉などすべてにも、この映画が描いたことと同じような破壊的な出来事が裏にはあり、ナイルパーチの話は特別なものではありません」と語り、「無知」であることの危険を訴えている。食のグローバリゼーションは、換言すれば「北」の少数が「南」の多数を収奪する行為であることが、この映画をみるとよく分かる。
 
 昆虫料理研究会の活動は、こうした食のグローバリゼーションを見直して、足元にある「食べられる物」を、かつてそうであったような「食べ物」として再認識しようとする試みでもあるのだ。ナイルパーチは低脂肪でヘルシーな白身魚として日本へも毎年約3000トンが輸入されているという。低脂肪でヘルシーなバッタを食べる我々の活動は、食のグローバリゼーションとは逆のベクトルをもつ地産地消やスローフードの考え方でもある。虫を食べるという行為は、この映画に引き寄せて言うならば、「武器」のボイコットであり、「愚かな行為」のボイコットでもあるのだ。


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