647 「昆虫食伝道師」篠原祐太氏のインタビュー記事についての見解


最近の篠原祐太氏の「昆虫食普及活動」には、生食パフォーマンス、他者の主張と自身の主張の混同、誤報などが散見されます。そこで当会の関連団体である食用昆虫科学研究会の見解をここに転載し、篠原氏の猛省を促すと同時に、社会的影響の大きいメディア関係の皆様の良識ある対応を切に願うものです。

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イケダハヤト氏のブログ「まだ東京で消耗しているの?」にて公開された、篠原祐太氏のインタビュー記事「地球を守るために、虫を食べる」:昆虫食の普及に取り組む「地球少年」篠原祐太氏が熱すぎる」
http://www.ikedahayato.com/20140612/7986261.html
について、食用昆虫科学研究会の見解を表明します。

2014年6月2日収録、6月12日付で公開された該当記事における篠原祐太氏の発言には、伝聞情報に対し出典が示されず、不正確な情報が含まれております。また、記事中に5月10日の講演にて発表した当研究会の報告内容が、彼の主張と混同されて紹介されており、誤解を招いています。既に、この記事を引用したと思われる記事も確認されたことから、社会的影響は少なくないと判断しました。
「虫食い」が飢餓を減らす 「食用ゴキブリ」がダメなら飼料に
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8004

当研究会は、該当記事を作成・公開することで、当研究会と昆虫食研究について不正確な情報を拡散したイケダハヤト氏、篠原祐太氏に対し抗議します。

篠原氏は当研究会の会員ではなく、篠原氏が当研究会の活動に影響を与えたこともありません。また、篠原氏の「昆虫食普及活動における生食パフォーマンス」に対し、当研究会は何度も異論を述べ抗議しましたが、未だに継続しています。すでに篠原君に対する教育・警告の段階は過ぎたと判断したため、これからの篠原氏の言動にかかわらず、今後とも当会からの協力は一切いたしません。

該当インタビュー記事に対し、以下の3点を指摘し、誤った情報が訂正されることを期待します。

1,「養殖昆虫の生食パフォーマンス」は、本来の昆虫食文化よりはるかに不衛生であり、昆虫食文化の保全と普及に対し逆効果であること。

2,当研究会の報告内容に類似したものが複数、出典を示さずに記事中に紹介されており、篠原氏の主張と混同されていること。

3,記事中に不正確な情報が含まれていること。

以下、詳細な説明です。

1,「養殖昆虫の生食パフォーマンス」は、本来の昆虫食文化よりはるかに不衛生であるため、昆虫食文化の保全と普及に対し逆効果であること。

食用昆虫科学研究会は、どの昆虫に対しても、食用の際は必ず加熱を徹底しています。ペットショップで購入した昆虫の生食は特に食中毒リスクが高いため大変危険です。
食中毒サルモネラ菌の両生類・爬虫類の保菌率は、特にペットショップで高く、80%以上の確率で蔓延しているので、そこで購入された生き餌用の養殖昆虫、特に雑食性のコオロギやゴキブリは、文化的な昆虫食に比べはるかに高い食中毒リスクをもつと考えられます。
(参照:『蟲ソムリエへの道』)http://mushikurotowa.cooklog.net/Entry/260/
また、そのような極度のリスクをもつ昆虫食文化は現存しません。
彼は昆虫食の伝道師を名乗っており、該当記事にて「ゴキブリを生で食べて死んでも、それは本望 」と語っています。それを日本食に例えるならば、“日本食文化の伝道師”と名乗る人物が、熱帯地域の川魚を刺身で食べるパフォーマンスを披露し、「日本食の普及のためには、食中毒になっても本望」とアピールするようなものです。

個人で奇食を楽しむことや、自己責任の範囲で不衛生な食べ方をすることについては言及いたしません。しかし、昆虫食の普及や昆虫食文化の保全を掲げるその場で本来の食文化ではありえない衛生管理の不徹底をアピールすることは、昆虫食文化に対する不衛生なイメージを創作し、流布するものです。彼の行動は昆虫食文化の保全と普及に対して重大な悪影響をおよぼす危険性が高いと判断したため、当研究会では彼に一切の協力をしていません。

2,当研究会の主張が複数、出典を示さずに記事中に紹介されており、篠原氏の主張と混同されていること。

当研究会は5月10日「研究現場の知財分科会」にて講演を行い、篠原氏も聴講者として実況に参加しました。
http://togetter.com/li/613281?page=1
その時のスライドはこちらです。
https://speakerdeck.com/2ndlab/xin-siixue-wen-fen-ye-woqie-rituo-kufalsehashui-ka-shi-yong-kun-chong-ke-xue-yan-jiu-hui-falsetiao-zhan-falseri

 A,「既存の昆虫食文化を持続可能な形で保全すべき」という主張について

<引用>
今後、既存の昆虫食文化を持続可能なかたちで保全していく活動にも注力していきたいですね。昆虫食を広めようとして、伝統的な文化を壊してしまっては本末転倒ですし。
<引用終わり>

この主張は、インタビュー記事からは彼の主張にも読み取れますが、当研究会が5月10日に発表した講演スライドに該当する文言があります。

この講演の聴講者であった彼は、講演中に以下のTweetを行っています。
https://twitter.com/yshinoearth/status/464985231024328704


この講演はインタビュー掲載(6月12日)以前のものであり、また当研究会の主張は彼の影響を受けたものではありません。

B「バッタの大量養殖技術の確立とシステム化により食糧問題と環境問題に対応すべし」という主張について

<引用>
> 篠原:簡単そうな感じはしますが、難しい部分もあるんだと思いますね。バッタ類は栄養価が高いので、大量養殖技術を確立し、途上国とかにそのノウハウを輸出して現地でシステム化すれば、食糧難も環境問題も雇用の問題も解決することができそうです。探求の余地がありそうで、個人的に今後注力していきたい領域です。
<引用終わり>

これは当研究会メンバー・佐伯の学位研究テーマです。5月10日の講演では、養殖バッタの実物を示し、概要を口頭で述べ、彼もバッタの写真を撮って紹介しました。

佐伯は2012年に、博士論文テーマ「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」を大学に提出しており、これに関して彼の影響を一切受けておりません。

 C,「アカデミックなところから入った方が文化レベルでの転換ができる」という主張について

<引用>
池田:なるほどー。企業とかも考えているんですか?
篠原:そういう方向性にいくと話題にもなりますし、そこそこイメージ通りにはなりますが、一過性のものになりやすいってのが懸念点ですね。アカデミックなところから入った方が、文化レベルでの転換ができるんじゃないかと。
<引用終わり>

当研究会は、2013年11月9日、サイエンスアゴラにおける講演「国連が薦める昆虫食~昆虫を食べる時代がついにやってきた~」から「科学的検証に基づく昆虫食文化の創造」を主張しつづけています。