528 『昆虫食入門』感想(1)


以下のメールとともに感想が寄せられました。滑り出しは順調のようです。

『昆虫食入門』、ほんとうに、もう、感動しました! 文学的であり、科学的であり、読み終えた時には、生き方に思いを馳せました。内山さんの魂がこめられているんですネ。小さい子が読んだら、その後の人生が大きく変わりそうな一冊です。

●昆虫食という冒険の書!,

読んでいる最中、ずっとワクワクしどおしでした。というのも、昆虫食に関する情報量の多さと洞察の深さがハンパないのです。文学、科学、心理学、栄養学、社会学…ありとあらゆる学問のジャンルを縦横無尽に駆けながら、昆虫食とは何かということが語られています。第一章のはじまりは、夢野久作の『ドグラマグラ』への言及です。そこからどうやって昆虫食に結びつくのか……結びつくのです。

私が特に感動したのはこの一節で、本書から引用します。

『時々、筆者は一人で夜の雑木林に入って虫を食べることがある。原始ほ乳類の感じた恐竜の恐怖をわずかでも追体験したいと考えたからだ。昆虫食の元々の意味を忘れないためである。』

もう、すごい。としかいいようがありません。間違いなく、天才肌です。夜の雑木林を歩くのは、私なんか怖いんですが、著者は、そこで虫を食べているんですよ。意義もよく理解できますが、夜の雑木林で虫を食んでいる著者を想像すると畏怖すら感じます。

また、昆虫食はマイナスなイメージがつきものですが、それはイメージ(先入観)に過ぎないということを繰り返し語られています。

『私たちが感じるきれい、きたないという判断は、意外とあいまいなものである。食品・栄養学が専門の伏木亨さんは『人間は脳で食べている』で、食品に必要なのは「清潔」ではなく「清潔らしさ」なのだという。』

これは、おそらく食に関する問題全般にいえることで、実際に安全であることよりも、安全らしさが優先される現実を考えればよくわかります。私たちは各々の脳の中でのみ、生きているのだと考えさせられます。

さらに、本書では昆虫食に関心をもつ人々を4つのグループに分けており、その内のひとつを「グルメとしての昆虫食」としています。つまり、昆虫をグルメ的見地から食材と見て、関心をもつ人々ということなのですが、私もそれに当たります。そのグルメとして昆虫食を楽しむ人への考察にも、感動しました。

『一見嫌悪を感じさせるような食べ物であればあるほど、調理方法や食べ合わせを考えるなど、美食家らしい勇敢さと冒険心の強さがうかがえる。それがグルメな人の本質なのだ。新たな興奮や感動を体験することは、食べることに限らず、違った人生観や他の文化への見方などが得られ、生きることをより多彩にしていく。彼らにとって昆虫食とはただ単に食べるという行為にとどまらず、常に革新的でありたいと願い越境を試みるライフスタイルの一環として存在している。』

そうなんです。食とは冒険なんです。ロマンです。人間であれば、食事の回数は大体同じようなものですが、何を食べようかと選ぶのは、意識であり、その人の生き方のあらわれなんです。つまり、食とは思想だとも思うんですね。

なぜ虫を食べるのか、その問いは、習慣によって埋没しがちな食への意識を改めて目覚めさせてくれます。

『昆虫食入門』は、昆虫食に関する雑学がみっしり詰まった本ですが、そこに留まらない、常識とはなにか? 偏見とはなにか? 生きるとはなにか? さまざまな問いを感じました。