[FABLE/虫食通信/蝗・蜂の仔(季語)]

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◎蝗(いなご)

螽(いなご)・稲子(いなご)・蝗捕(いなごと)り・蝗串(いなごぐし)

【解説】 直翅目の昆虫で、ばったより小さく、体長三センチくらい。緑色で翅は淡褐色。後肢がよく発達していて、よくとぶ。鳴かない。田圃や草原にいて、稲の害虫である。このためもあって「いなご捕り」がおこなわれるが、炒ってつけ焼きにしたり、佃煮にして食べても美味だし、脂肪が多いので工業用にも用いられる。[金子兜太〕

鴫網の目にもたまらぬ螽かな  史邦
道ばたや蝗つるみす穂のなびき  暁台
とび上る螽の腹に入日かな  高浜虚子
螽焼く燠のほこほこと夕間暮  飯田蛇笏
夕焼けて火花の如く飛ぶ蝗  鈴木花蓑
一字や蝗のとべる音ばかり  水原秋櫻子
蝗皆居向をかふる家路かな  阿波野青畝
石橋の蝗や野川とどまらず  山口誓子
みちのくの秋はみじかし跳ぶ蝗  福田蓼汀
蝗熬る炉のかぐはしき門過ぎぬ  西島麦南
ここまでの競輪の鉦蝗の昼  鈴木六林男
ひとり夜の煙草火で焼く蝗かな  赤尾兜子
蝗とぶやたんぼの中の湯葉料理  高桑義生
糸にさす蝗の顔のみなおなじ  大竹きみ江

◎蜂の仔(はちのこ)

地蜂焼(じばちやき)・蜂の子飯(はちのこめし)

【解説】 地中に巣をつくる地蜂の子すなわち幼虫である。十月頃、地中に手製の火薬などをしかけて、巣を取り出し幼虫をとる。それを炒ったり、甘露煮や蜂の子飯にして食べる。信州の名物で、缶詰にして売られている。〔滝沢伊代次〕

高原の水禍をよそに地蜂焼  飯田蛇笏
山を恋ひ蜂の子飯を恋ひわたり  宮野小提灯
蜂の子を食べて白骨泊りかな  野見山朱鳥
眼がのぞく秋の蜂の子売られけり  加藤知世子
蜂の仔採り贄の蛙をかかげたり  稲垣敏勝

*『日本たべもの歳時記』(講談社+α文庫、1998年刊)より抜粋

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