虫食い散歩2033~未来の街角から~
4億年前に誕生した昆虫は、全動物種の75パーセントを占め、地球上でもっとも繁栄している動物といえるでしょう。極地を除いて広く分布し、数も多い昆虫は、人類の身近で簡単に手に入るタンパク源として食べられてきました。
戦後の高度経済成長にともなう自動車流通産業や「食の工業化」の急激な拡大により、利益率が悪く非効率な食材が切り捨てられ、各地方で食べられてきた多様な食材が姿を消すなか、昆虫もその例外ではなかったのです。
バブル崩壊後、身近な「食」の魅力の再発見の機運が高まるなか、昆虫を含む多様で適度な食生活が健康で長生きできる要因の一つであることが、長寿県長野の例からも実証されました。こうして昆虫食への一時期の負のイメージが払拭され、人間と食べ物が競合するほ乳類に比べ、飼育スペースと生産量に優れ、生産効率の良い食料資源として見直されるようになってきました。
地球環境に優しい昆虫食は、良質のタンパク質やコレステロールを減らす不飽和脂肪酸を多く含むことから、健康食・美容食として注目されるようになってきました。各種のメディアも昆虫食のポテンシャルの高さを認識しはじめ、プラスの側面から昆虫食を紹介しようという意欲が高まりをみせてきています。そうした機運のなか、さらに昆虫食に親しんでほしいという願いをこめて本展は企画されました。
2033年の日本では昆虫食がトレンドとなっています。美容と健康に優れ体に優しい食べ物として、また季節を彩る旬の食べ物として定着し、街角の至る所で昆虫を食べる風景がみられるようになりました。そうしたライフスタイルを切り取った写真を集めてみました。
現在の世界は地球二個半分のエネルギーを使っているといわれています。地球一個分の持続可能な暮らし方を未来から考え、それを実現するための新しい価値観を生み出すことが求められています。未来からのメッセージとして本写真展がごらんになった方々の心に伝わることを願っています。