爬虫類・両生類ショップで通称“デュピア”を見かけた。Lサイズ8匹500円也。「タンパク質・脂肪が豊富で太りやすいエサです。」とキャッチにある。人間にとって「太りやすい」は禁句だが、ペットとなると別のようだ。
デュピアの正式名は、アルゼンチンモリゴキブリ(Blaptica dubia)(以下アルゴキと呼ぶ)といい、オオゴキブリ科マダラゴキブリ亜科に属している。体長はオス約35mm、メス約40mm。写真の左がオスで右がメスである。マダガスカルゴキブリ(以下マダゴキと呼ぶ)が約70mmなのでいくぶん小振り。大きな違いはアルゴキには翅があることだ。ただメスの翅は退化していて約10mmと短く、まるで背中で結んだ飾りリボンのようでかわいい。オスには立派な翅がある。翅の点ではやはりオスが長くメスが短いヤマトゴキブリに似ている。ただ系統的には九州から沖縄にかけて分布するサツマゴキブリに近いらしい。
サツマゴキブリは漢方でシャ虫といい、中国では2000年の昔から「大黄シャ虫丸」として有名である。現代でも多くの製薬会社から製剤として発売されているという。学界誌によれば、乳腺炎には96.97%が有効であったという。このほかB型肝炎、慢性肝炎、肝炎後の肝硬変、肥満性脂肪肝などに効果が認められているらしい。ただし日本ではゴキブリ製剤は薬として認可されていない。
このアルゴキの雄雌各1頭を串に刺してサッと揚げてみた。初物に心ときめく。サクッとした歯触り、タンパク質のほのかな甘み。これは思いの外いける。「いける」第1は外皮が柔らかいことだ。われわれはこれまで主にマダゴキを試食してきた。これは外皮が硬く、丸ごと食べるにはちょっと抵抗がある。ところがアルゴキはオスの翅がいくらか気になる程度で、揚げれば問題なく丸ごと食べられる。とはいえオスの翅は最初に取り除いた方がより食べやすくなる。天ぷらにすれば翅もサクサク食べられそうだ。味は淡泊で癖がない。塩でいただく。マダゴキは内蔵などに多少の臭みがあるが、アルゴキは今日食べた限りでは臭みもなかった。おすすめである。
しかもメスは子持ちだった。熱湯をかけるとメスのお腹から卵がのぞいた。なんと幸福なことか。そのままいっしょに揚げる。みると卵の一個一個に点々と黒いものがあるではないか。これはいったい何だ。目を凝らすと、どうやらそれは出来かけの複眼であることが分かった。孵化間近だったに違いない。卵1個が4-5mmはありそうだ。クロスズメバチ幼虫より一回り小さいぐらいか。微量なので味をなんと形容すべきかわからないが、卵はどんな種でも旨いという経験則を裏切らない味わいだった。
うまくすればこれも試食会の常備品になるかもしれない。マダゴキがそうであったように、幼虫から成虫まで比較的飼育が容易ということらしいので、暖かくなったら本格的に累代飼育を試したいと思っている。
コメント
…ゴキブリ牧場?
牧場が軌道に乗ったら試食会に持参します。乞うご期待。
デュビアは我が家でも爬虫類のえさとして養殖していて常時2000匹程ストックしてありますよ。
マダゴキよりも増えやすいですが本格的に増やすならばもう少し種親を増やした方がいいかもしれませんね。
gigiさん、2000とはすごいですね、こちらもがんばります。冬場の温度管理などどうされていますか。飼育はやはり大きな衣装ケースに卵のパックでしょうか。
多量の餌の常備があるということは、かなりの爬虫類を飼育されれているのでしょうか。よろしかったらペットたちを紹介願えませんか。
いざ急に必要というときは安く出荷していただけると嬉しいですね、よろしくお願いします。
そうですね、飼育は衣装ケースに卵のパックです。
保温は爬虫類のプレートヒーターを使うと便利ですよ。
デュビアは肉食魚やサンショウウオ、ヤモリやタランチュラと爬虫類に限らず使っています。
いったん増え始めれば安定して増えていきます、私は150匹程度から始めました。
最近はビッダーズオークションなどである程度の数が安く出回っているので覗いてみると良いかもしれません。
150頭からですか、安定して増えるにはある程度の集団が必要なのですね。しかし2000頭もいると衣装ケースが何箱も必要になりませんか。掃除のこととか管理に費やす労力を考えると、ゴキブリ牧場もそれほど簡単ではなさそうです。
餌は何なのでしょうか?
オスはあの羽ですから、やっぱり飛翔するのでしょうねえ^^;
マダゴキと違って油断すると・・・。
『卵はどんな種でも旨いという経験則を裏切らない味わいだった。』
さすがはbugさん、生唾ごっくんの文章です。
参りました。m( )m
gigiさんにデュビアの餌については登場願いたいですね。ゴキブリ全般に雑食なので、なんでも食べると思いますが、とりあえずわからないので「コオロギ用の特製フード」や「亀用のレプトミン」を中心に与えています。
雑食ということで思ったのは、ゴキブリの場合ですが、雑食ゆえに特定の臭いや味がしないのではないかということです。ゴキブリはマダガスカルゴキブリも今回のアルゼンチンモリゴキブリも、さらには嫌われ者のヤマトゴキブリやクロゴキブリでさえも、癖のある臭いや味がなく、淡泊で、非常に食べやすく感じます。
昆虫の味の多くは餌に左右されるという大原則があり、例えばカイコの蛹の癖のある臭いは食草である桑のせいですし、柑橘類を食べるアゲハの幼虫はミカンの味がするし、モンシロチョウの幼虫はキャベツの味がします。昆虫食は昆虫そのものの味はもとより、餌の味もともに味わうという楽しみ方もありそうです。
こんばんは。
デュビアは比較的密集していても大丈夫なので衣装ケースは大二つで大丈夫です。
確かに増えてくると掃除は大変になってきます。
エサは私の場合はハムスターの餌やコイの餌、業務用昆虫ゼリーを使っています。コストパフォーマンスから考えても便利ですよ。
最近のデュビアに関しての悩みは累代飼育による近親交配の影響です、近親交配が続くと次第に矮小化してくる事がよくあるらしいのですが、我が家のデュビアも種親が兄弟だったのか、ここ最近そのような個体が見られるようになってきました。
一応それでも餌昆虫としては問題ないのですが、今は新しい血を導入している最中です。
いつも素晴らしい記事を読ませていただいているので、無事完了したらbugeaterさんが必要な時はいつでも譲りますよ。
衣装ケース一つで1000頭も飼えるとはゴキブリならではですね。密集飼育が問題の養鶏とそこが大きな相違です。ゴキブリインフルエンザなんて考えられませんから。
近親交配の問題は昆虫といえども生物である以上避けられないことでしょう。軌道に乗ったら譲っていただくかもしれません。
gigiさんありがとうございます。
やっぱり雑食ですか。
掃除さえ苦にしなければ、どんな餌でも大丈夫そうですね。
衣装ケースの側面にはオイルを塗る必要はありませんか?
また、近親交配による矮小化は、課題の1つですね。
動きはどうですか?
マダゴキよりも俊敏に見えますが・・・
生態系の保護の意味からも、
やはり「逃亡」は避けたいので・・・。
ま、とにかく1度試食してみないことには、
牧場開設というわけにはいきませんが・・・。
bugさん、インフルエンザは無くても、
どんな動物にも天敵ウイルスはいるかもしれませんよ。
カエルにもツボカビ症みたいなのがありますからねえ。
デュビアは動きは鈍いですよ。
このブログを見て食糧難の国などにデュビアを提供できれば解決できそうな気がしてきました。
爬虫類用の餌が食糧危機を救うかもしれない・・・
ちなみにうちのデュビアはまったく掃除をしていません。
しかし、乾燥していれば死にません。
湿っていると病死する個体やダニが出てきたりします。
水は餌のにんじんからの水分だけで十分です。
キクラゲさん、アドバイスありがとうございます。乾燥に強いということは聞いていましたが、本当にそうなのですね。ということはむしろ梅雨が危ないということでしょうか。
高温期でも動作は鈍いということですね。安心しました。クロゴキブリのように敏捷だったらどうしようと思っていました。ところでオスは立派な翅があります。あれで飛ぶことはないんでしょうか。なんとなく不安です。
デュビアは壁を登れないので脱走の可能性はかなり低いです。
また、ゴキブリ自体高いところから下へ飛ぶことはあっても
上に跳ぶことが出来ないので
脱走はそれほど心配しなくても大丈夫です。
それをうかがって安心しました。