京都塩野屋主催のシルクカフェが29日19時から東京世田谷の代々木上原で開かれた。来場者7名に蚕に因んだ昆虫料理を提供し、アンケートをいただいた。今回は昆虫料理を積極的に食べに集まった人たちではない。その意味で彼らの意見は貴重だった。
■アンケート結果
第1位 「蚕卵の塩茹で」 94点
・食感がよく、噛むほど味がでます
・ぷちっと味があっておいしい
・こんなのしらん
・プチプチ感が良い
第2位 「蚕茶飯」 89点
・全然クセがなく一般受けしそう
・おかわりしたぐらいおいしかったです
・こんなおいしいのはじめて
・自然においしい
第3位 「蚕蛾の佃煮」 86点
・日本酒にピッタリ
・しっかりした味付け
・これ最高
第4位 「蚕蛹の燻製」 71点
・日本酒にピッタリ
・すっごく美味しい、商品化したいです
・味はおいしいけど食感が……、食感が変わればもっといける
第5位 「蚕幼虫の素揚げ」 69点
・クリームっぽい食感
・そんなに味しなかったかな
・ポテトチップみたいで良い
■考察
「蚕卵の塩茹で」がトップにくることは前もって予想された。トンブリに似たプチプチした歯ごたえは独特だし、噛み締めると濃厚な旨味が味わえる。和風にも洋風にも使える守備範囲の広い食材である。難点は入手の困難さである。我々が飼育して順調に羽化したとしても、蛾からどれだけの卵が得られるだろうか。
「蚕茶飯」は虫体が入らないのでこれまた上位が十分予想された。そもそも蚕糞は染色に使われており、淡いベージュのおいしそうなご飯が炊きあがる。加えて蚕糞には健康機能性食品的要素もある。蚕糞の内容物の多くは未消化桑葉と蚕の消化酵素の混合物である。それは造血作用、新陳代謝促進作用、防臭作用、抗菌作用などがある葉緑素クロロフィルや、血糖値上昇抑制効果が期待されるデオキシノジリマイシンを含んでいる。漢方では「蚕沙」(さんしゃ)と呼ばれ関節痛などに効果があるとされている。この料理の唯一の欠点は鰹だしを使っている点にある。昆虫出汁の研究が急がれる※。
「蚕蛾の佃煮」が第三位に入った。あまり好かれない蛾なのだが、しっかり水洗いして鱗粉を取り去り、佃煮という食べ慣れた味付けにしたことが、おいしく食べていただけた要因なのではないか。
もっと上位にくると予想した「蚕蛹の燻製」が第4位に留まった。燻製の味と香りはみなさん評価したのだが、噛むと皮が破れて出てくる中身の柔らかさには、慣れないとやはり抵抗があるようだ。
「蚕幼虫の素揚げ」は揚げたてをスナック感覚で食べてもらうというものだ。幼虫自体はこれといった味もにおいもないため、特に冷めると評価は下がることが十分考えられる。
※昆虫出汁について翌日家でいくつかの種類で試してみた。
・カイコ粉末 淡いベージュ色。うすい豆の風味。
・マダガスカルゴキブリ粉末 ほぼ透明。ほのかな風味はするが何かは不明。
・サクサン粉末 淡い緑色。濃いカイコ風味、後味に残る。しょうゆを加えると臭みがマスキングされる。今度は殻で試してみたい。
・イナゴ粉末 玄米茶のような茶色。田園の香り、稲の香り。
・コガタスズメバチ生 乳白色。旨味が濃く、味の素のようだ。グルタミン酸の味。