梅雨の晴れ間に稲城の山へ入る。最近参加した粘菌観察会の印象が強く、倒木を見ると粘菌を目が探している。残念ながらこのまえ紹介したオムレツのようなススホコリに出会う幸運には恵まれなかった。もう時期が遅いのだろう。また来年の楽しみにとっておこう。
それでもトビズムカデ成体、ノコギリカミキリ成虫、ウバタマムシ成虫などを採集した。
トビズムカデの成体に出会うことはあまりない。前回崩した倒木の木片を除くと躍り出た。鳶色(茶褐色)の頭部と黒光りする胴体は鎧をまとった中世の縦列兵団さながらだ。成体にしか見られない力強さである。
ノコギリカミキリの魅力はなんといってもギザギザしたノコギリ様の触角ではなかろうか。こんなすごい触角はあまり例がない。
タマムシというと正倉院の玉虫の厨子を思う方が多いかも知れない。たしかにあの緑の金属光沢はこの世のものとも思えない。まさに玉虫色である。そうではあるのだが、ウバタマムシの一見地味だが味わい深い赤銅色にも惹かれる。色彩豊かなタマムシが西洋的美を象徴するならば、ウバタマムシの色彩は日本的「侘び・寂び」の世界に通じるのではないか。
前置きが長くなったが、標題のフタトガリコヤガである。山から下りて平らになったところの路傍に芙蓉(フヨウ)が生えていた。みると毛虫が何頭も群がっている。青地に黄色いラインが三本走り、黒い斑紋が転々と付いている。おまけに尾部が赤い。なんと目立つ毛虫だろうか。昼間なのに葉の表に出てひらすら葉を食べている。黄色、黒、赤が捕食者に対する危険信号なのかと想像する。体長3〜4cm。十数頭採集する。帰って図鑑を調べるとフタトガリコヤガと判明した。
初物を試食する。フライパンで炒めるのが一番だ。蛾類の幼虫系はこの大きさだと中身はほとんどない。食草の青汁が詰まっている薄い袋だ。油で炒めれば爆ぜてとんでしまうだろう。フライパンに油を熱してぱらぱらと4頭ほど投入。案の定油が高温になるにつれパンパン爆ぜてフライパンから飛び出したりするものも出てくる。さっと揚げて出来上がりだ。皿に盛り、塩コショウでいただく。予想に違わずサクサクした歯触りで、軽いスナック菓子に近い食感である。秋に捕れるスズメガなどと違って自己主張がなくなんだか頼りない。とはいえ芙蓉の葉上でのびのび育った幼虫は自然から恵まれたご馳走に違いない。
コメント
まさに目印になるくらい派手な毛虫ですね、警戒色とは言い、鳥に捕食されないのでしょうか? 炒めてもちゃんと体毛が残っているのが素晴らしいですね(笑)
いつも不思議に思うのですが、タランチュラやサソリやムカデなどの毒虫は料理(加熱)される事で人間には無毒になっているのだそうですが、毒の成分はヒスタミンとペプチドの混合毒だと聞きます。アレルギー体質の人も食べても大丈夫なのでしょうか?
昆虫のほとんどは毒を持たないとされています。したがって加熱すれば衛生的には食べても問題がなくなります。ただしツチハンミョウなどは熱を加えても分解しないカンタリジンという有毒成分を持っているため食べないほうがいいとされています。
ただし昆虫と同じ節足動物であるエビやカニなどの甲殻類にアレルギーのある場合にはあまりお勧めできません。甲殻類アレルギー体質だがどうしても食べたい人はまず少量を試してみるといいでしょう。
実はうちの母ちゃんがエビカニアレルギーで少量でも食うと倒れます。
だからか知りませんが、私は何kgかカニ食べると頭がツーンと痒くなります。
ちょっと違うか。
ヒスタミン過敏症の方はサバや鶏肉と同じ理由であまり毒虫系は口にされないほうがよろしいのではないかと。
もっとも、日本では普通は過食になるほどそれらの昆虫を口にはできないと思いますけど。
芋虫系は・・・実はスズメガの幼虫のでかい奴には深層心理に苦手意識があったりします。
幼少の頃に、あのピコン!と激しくくねるのがなんとも苦手でした。
最近は出会わないので実際どうだかわかりませんけど、一種のトラウマっぽいものが。
こんにちは。自然観察にも、昆虫食にも、興味をもっているものです。
フタトリコヤガは我が家のスイフヨウに毎年来る定番幼虫です。
フライパンで炒めて塩コショウですね。今度、家族に隠れてやってみます。
それから、粘菌ですが、一時期粘菌を飼っていたことがあります。キフシススホコリだと思うのですが。飼っているといわゆる「栗の花」のにおいがしました。ので、まずいと思うのですが。
>bugeaterさん
ありがとうございます安心しました。甲殻類アレルギーはないので心置きなく食虫できそうです。今飼っているコガネグモたちは今年は放虫しないで食べてみようと思います。
>せつなさん
杉花粉のアレルギーはあるのですが、サバは大好物で平気で食べてますので多分昆虫も大丈夫じゃないかと思います。芋虫系は苦手なんですか?私は逆のトラウマがあって(笑)http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/youtyuu/index.html
こんなの食べちやうなんて凄すぎです><