秋になると蛾の幼虫は越冬蛹になる場所を探して徘徊(ワンダリング)するようになる。これを捕らえるのがこれから10月にかけての楽しみのひとつだ。毎朝通勤に多摩川の土手を一駅歩く。運がよければ遊歩道を横断中の芋虫に出会うことができる。雨上がりの晴れた朝などは格別多く出没する傾向がみられる。けっこう遠くからでも分かるので、見つけたら速やかに採取するほうがいい。運が悪いとカラスに先取りされる場合がある。
鱗翅目の幼虫の中身はほとんどが消化物だ。悪く言えばフン袋で、良く言えば青汁袋ということになる。たとえばモンシロチョウは、キャベツを食べているので、口に入れると当たり前だがキャベツの味しかしない。
では本題のセスジスズメに入ろう。多摩川の土手を横断中の二頭を発見、さっそく採集した。今秋の初物である。とりあえず素揚げでいただくことにする。芋虫・毛虫系は揚げるまえに端を切っておくことが大事だ。そうしないと油に入れると皮が破裂してせっかくの旨みが飛び散ってしまう。
(1)1日おいて脱糞させる。
(2)熱湯で殺す。
(3)水分をよくふきとる。
(4)尾部にハサミを入れる。
(5)高温の油でカラっと揚げる。
(6)塩・コショウでいただく。
一見ソーセージのような外観だが、中身がなくなるとしぼんだ風船のようになる。揚げてサクッとした外皮の食感を楽しみたい。応用としてチーズなど詰めて揚げてもおいしい。
セスジスズメは外見の特徴がある蛾だ。成虫はその名の通り背中に白いラインがタテに走っていてとてもスマートにみえる。幼虫の脇腹には片側に7個、もう片側に7個、計14個の大きな眼状紋がある。そしてなにより特徴的なのが、先が白くてかわいい尾角を前後にふりふり歩くということだ。尾角のある蛾は多いがそれを振るのはセスジスズメぐらいしか見たことがない。なかなか愛嬌のある蛾である。
004 セスジスズメ
