映画『どろろ』を見る。柴咲コウ扮する野盗“どろろ”が、タガメを食べるシーンを確認するのが主な目的だった。こんな変な目的で『どろろ』を見るのは私ぐらいかもしれない。
どろろはやはりタガメを食べていた。四十八カ所に散らばった肉体を取り戻そうとする百鬼丸との衝撃的な出会いの後、どろろは運命的なものを感じて旅を共にすることを決意する。そして小川のほとりで休息するシーンが続き、河原に座ったどろろがやおらふところから出した巾着袋の紐をゆるめる。「でるぞ、でるぞ」という私の期待に違わず、袋から取り出したのは紛れもないタガメそのものだった。バリバリという咀嚼音が館内に響く。ほんの数秒のカットだったが、どろろの性格を印象づける場面だったように思われる。
ほぼ一年前のことだが、正確には2006年2月15日付けで、『どろろ』の製作スタッフからメールが届いた。手塚治虫の『どろろ』の実写映画を作っているという。その中でどろろが虫を食べる描写のシーンがあり、食べられる虫として、タガメ、フナムシ、サソリを候補に探しているがなかなか見つからない。入手方法などを教えてほしいというものだった。いろいろあったが、最終的にはタガメに落ち着いた。外見がいかにも怪獣っぽく怖そうだし、まるごと頬ばれる大きさだし、なにより入手がしやすい。完成した映画を見た知人から確かにタガメだったと聞いてはいたが、実際にこの目で見てみたかった。
映画を見てやはりタガメで良かったと確信した。第一に、どろろは海を一度も見たことがないのにフナムシはないだろう。サソリにしても棲息地は沖縄など南西諸島に限られる。タガメはかつて日本のいたるところにいたのだからリアリティがある。第二に、雄の嗅線から発せられる物質は、果物乃至肉桂の芳香を放ち、「気の巡り」を活発にするといわれる。本当の自分を取り戻す旅立ちにこそその食事はふさわしい。またタガメは父性本能があり孵化するまで子の世話をする。それは生まれ来るわが子の肉体を四十八体の妖怪にばらばらに売り渡した百鬼丸の父へのアンチテーゼともいえないか。敷衍して親族殺しに対する強烈な風刺をも内包する普遍的な重いテーマの予兆と捉えるのは偏りに過ぎようか。
137 映画『どろろ』を観る──どろろはやはりタガメを食べていた
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コメント
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こりゃいい話です。四月のひるべはこれを宣伝文句にしましょう!
へー、あれって内山さんのアドバイスだったんですね。原作ではコガネムシの幼虫みたいなものを掘り出して生食いしてる場面があるんですけど、映画ではタガメだったから、監督が昆虫食に興味があるかタイ料理マニアなのかなと思ってました。
ららさん
原作は読んだことがありませんでした。コガネムシ類の幼虫でしたか。それよりタガメの方がいいと僕なんかは思ってしまいます。
よるのひるねさん
4月になにをしようか思案中です。タガメをテーマになにかできないか、どなたかアイデアがあったら教えてください。
タガメチリペーストの購入先の情報をありがとうございました。
以前、ラオスに行った時にタガメを初めて食べたのですが、あの香りがとても気に入りました。ラオスではツムギアリ、コオロギ、蜂の子、蚕の蛹なども食べました。
映画「どろろ」は実写でありながら原作のビジュアルを上手にくみ取った傑作ですが、ストーリーは原作に忠実というわけではないんです(忠実だから良いというわけでもありません)。原作のその場面は、百鬼丸と妖刀の持ち主が精神力のみで戦う場面にでてきます。そこは荒野で、まわりに川などはなく、刀を構えたままピタリとも動かない二人を前にして、どろろは退屈と空腹をまぎらわせるために芋虫(おそらくはコガネムシ類の幼虫)を地面から掘り返して食べるんです。原作とはシチュエーションも異なりますから、どちらが良いとか悪いとかの比べ方はできないと思いますよ。
タガメチリペーストですが、海苔巻きなんてどうでしょうね。具はタガメチリのみで細く巻いてもいいですし、キュウリを入れてタガメとカッパのランデブー巻きにしてもおいしそう。
なるほど!こんなに奥深い意味があるなんて考えもしませんでした。
原作者があの昆虫に造詣の深い手塚先生ですからbugeaterさんの助言の的確さに、きっと手塚先生も喜んでおられると思います。