521 イナゴとバッタ

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ドストエフスキーの亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』を読んでいる。その中の第2部第4編は有名な「プロとコントラ」である。ここでは大審問官が語るこの小説の核心とも言える神の存在がテーマとなっている。ここにつぎのような一節がある。

「知るがいい。わたしはおまえなど恐れてはいない。知るがいい。このわたしも、かつて荒野にあって、イナゴと草の根で飢えをしのいだことがあった。」

聖書にも「洗礼者ヨハネはイナゴと野蜜を食べ物としていた」とあるのだから、この一節も別段不思議はないようにおもわれるが、分かりやすい現代訳で好評な亀山訳なのだから、昆虫食的立場からすれば、ここは思い切って「イナゴ」ではなく「バッタ」と訳してほしかった。イスラエルの地にイナゴがいるとは思えず、これはサバクトビバッタあるいはトノサマバッタのことであろう。聖書の誤訳を踏襲しているのは明らかで、イナゴバッタでは読後感がまるで違う。そもそもロシア語にイナゴという単語があるのだろうか。原典にあたってみたいと思う。

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